2012年御翼3月号その3

東日本大震災を、世界平和のきっかけに

 日野原重明先生(1911〜 )の父親は、有能な牧師として知られていた日野原善(ぜん)輔(すけ)である。先生は、子どもの頃、父から教えられた三つのVが生涯の支えとなったと言う。「父はよく次のように諭した。『重明、三つのVを持たないといかんよ。第一はビジョンを持たないとだめだよ。できれば大きなビジョンをね。理解されない場合があるかも知れない。それでも自分の目標に勇気をもって行動する第二のV、ベンチャーが必要だ。そうすれば、いつの日か、死んだ後かもしれないが、必ず第三のV、ヴィクトリー(勝利)が実現する。先の二つのVに専念しろよ』」重明先生がこのことを述懐したのは88歳(2000年)の時で「こんな歳になってまでも、この父の教えは心の中にあって私を支えています。確かに私の人生を振り返ると、新しいことを言い始めてから、その実現には20年かかりました」と言っている。
 3.11の大震災では、一週間のうちに、中国や北朝鮮を含む世界156カ国から、支援が来た。沖縄にいたアメリカの空母も来て、世界の国々が結集し、人類愛を証明した。それなのに、核兵器を持って国と国とが戦争をする。しかし、例えばアメリカが「もう我々は核兵器を使わないから」と言えば、北朝鮮も、核を持とうとすることを主張しなくなるはずだと、日野原先生は言う。以下は、先生の著書『医師のミッション』からである。
 9.11の反撃から始まったイラク戦争で、アメリカは報復という挙に出たけれど、イラクでは軍人以外に市民が大勢亡くなっているのです。私は、人間はこれだけの人道心を持っているのだから、これを機会に日本が全く自衛隊の武器をなくし、事故や災害のためにだけ活動するようにして、戦闘機、爆撃機も軍艦ももたないようにすることがいいのではないかと思います。日本が武器を持っていない国として手を挙げたら、そしてアメリカも同意してくれば、本当の平和が実現できると思います。今は、「自衛隊」と言いながら、アメリカと一緒に核兵器の操作の訓練を受けています。しかし、今度の震災という機会をもって、世界平和のために、日本は武器のない国にする、そういう運動を起こすことができれば、この災害がポジティブに生かされます。それを本気で考える必要があるのです。自衛隊は、世界のどこかで災害が起これば、無条件で助けに飛び出すというものになるべきです。武器を持たない、自衛軍でない自衛隊にする。今、あの自衛軍のために、戦闘機に何百億も使っています。そんなものを買うよりも、それを全部教育と福祉に使えば、どんなにいいかわかりません。私は、日本が平和国家になるには、まず自衛隊が軍備を解いて、災害救助のための組織になることが必要だと思います。私は、理由は何であれ、戦争は殺し合いだから、あってはならないと思うのです。ですから、アメリカも9.11テロに対して、「今度からやるな。許す」と言えば、もうあのテロはなかったはずなのです。それを、何倍もの反撃をしましたね。人間はお互いにいろいろな誤りをやってしまいます。間違いをおかしたときに、「許す」ということがあれば、そこに愛が生ずるのです。何かを受けても、許すということ。許すことができれば、戦争、殺し合いは起きません。私は、今度の震災をもって、世界平和のきっかけにする運動を、世界中に起こそうではないかと思うのです。そのためには、少なくとももう十年、現役でがんばらなければ。
 報復の連鎖は、罪の奴隷となり続けている状態である。それは人類を死へと導く。そうではなく、キリストの名において互いに赦し合い、平和の実現を提唱しているのが日野原先生である。先生の100年の人生は、キリストに近づく聖化の過程であり、育まれた純真な信仰により、より偉大な目標に向かっておられる。東日本大震災後、原発をやめるだけでなく、日本こそ軍備を捨てて、世界平和のリーダーとなろう、と呼びかけておられる。人の目には不可能に見えるかもしれないが、「それを本気で考える必要があるのです」と。
 私たちは、聖書を正典的解釈するクリスチャンとなり、その信仰を伝えて行こう。

バックナンバーはこちら HOME